全国紙の版建て  2012.1.23 掲載


版建てが何かよく分からない人は、まず、こちらの説明をどうぞ。紙面の記号についても説明してあります。


ここに書かれたことは、主に東京版の考察です。なお、新聞社では、版別の配布地域や締め切り時刻、紙面に掲載の
記号の意味について公表してはいません。したがって、裏付けの取れない推測が多く混ざっている個人研究です。また、
記憶があやふやな部分があります。誤認、誤解はご容赦ください。また、ここに書かれることを元に関係新聞社への問い
合わせは、ご遠慮ください。(笑)


30年以上前は、東京・大阪・名古屋・福岡などにある本社工場でのみ印刷されていましたが(1960年代始めには一部、地方印刷も始まっていました。まず、札幌・弘前と読売の高岡だったかな?。)
現在では、大都市部の周辺都市や地方紙(あるいは全国紙同士)へ委託する形で配達地域の近くで印刷されるようになってきました。
そのため、当時と比べ早版と遅版の時間差は、かなり縮まってきたと思われます。ただ不思議なのは、一部を除き周辺都市や委託印刷では、なぜか最終版を印刷・配布することはないようです。しかも、各社横並びですので、もしかしたら降版協定のような配布版協定(着店協定?)でもあるのかもしれません。そのため、配送時間に余裕があるにもかかわらず、全国的にかなりの地域が13版の配達に留まっていると思われます。(東京都区部は、もちろん最終版地域ですが、隣接する川崎・横浜が最終版なのに対し、千葉県船橋市や埼玉県南部が最終版ではないのは、印刷能力だけでは説明がつきません。)

それと、なぜ14版が最終版なのかは、それを解説した資料を見たことが無いので分かりません。(元記者さんが書かれた本などには「最終版の14版が・・・」と、いきなり書かれてあるものがほとんどです。夕刊の1版が午前10時締めとして1時間ごとに数えていくと午後11時が14版になりますので、この考えは違うようです。)


朝日新聞朝刊の場合、午後10時ごろ締め切りの12版から、最終の14版までの3種類で、12版と13版は、セット版と統合版があり、合計5種類の朝刊を作っているようです。(区別するため、統合版には版の後に▲が付きます。大阪版地域の岡山で14版▲を見たことがあるので、14版の統合版も一部の地域にはあるようです。
また、東京と大阪は、版建てが違うようです。ハッキリしませんが、大阪には12版がないような気がします。となると夕刊2版も無いことになりますが・・・。)

読売新聞は、逆で統合版には記号が付かず、セット版の朝刊には版数の後にSが付いています。

左画像のように、さらに「セット」と表示していた時期もあります。

 

 

 

 

セット版は、朝刊と夕刊のセットで1日分の新聞、統合版は、前日の夕刊と当日の朝刊を統合した新聞です。(日付から云うと、当日の朝刊と夕刊で1日分のような気がしますが、記事の流れからは、上記のようになります。)

一般的に統合版は、印刷所から離れた地域向けの新聞です。
セット版と統合版は、何が違うかと云えば、統合版には、セット版前日の夕刊に載っていた出来事が初めて載ることです。前日午前の大きなニュースは、翌日のセット版では続報になりますし、統合版では第一報になります。
セット版も統合版もページ数は、ほぼ同じですので、統合版は紙面の都合で記事が省略されたり、小さな記事は載らないでしょう。(夕刊の小さな記事は、夕刊地域で起きた出来事ですので、どちらにしても統合版地区には、ほとんど関係ありません。)
でも、これはセット版と見比べて初めて分かることです。また、夕刊の連載小説やマンガは翌日朝刊に載っているものもあります。

富山では、読売新聞の統合版とセット版が同時に手に入りますので、見比べてみます。

2001年9月1日午前1時過ぎに発生した「新宿歌舞伎町ビル火災」の報道です。
発生時刻が未明のため、富山では夕刊からの報道です。

画像上から1日付夕刊3版、2日付朝刊13版(セット版)、同13版(統合版)の順です。

2日付の朝刊に注目です。セット版では、前日の夕刊で一報を報道済みですので、続報です。
一方統合版では、第一報になります。

真ん中と下では、見出しが大きく違い、別の日の新聞のようです。

 

 

 

 

 

 

では、同じ版のセット版と統合版では、1面の降版時刻に差があるのでしょうか。2008年11月23日の朝刊13版で見比べてみます。

この日は、重大事件の容疑者が午後9時半過ぎに警察へ出頭したことが報じられています。セット版も統合版も第一報になります。

新聞社は、事態を午後10時前に知ったと思われます。
右が13版セット版、左が13版●です。

一面は、統合版は追いかけ版ですが、セット版に比べ記事が8行少ないです。ただ、真ん中の海外記事の影響があるかもしれません。(夕刊に載っていたと思われる記事が、統合版にあります。)

また、通常の13版を手に入れられなかったので、何が差し替えられたかは不明です。

 

一方、社会面は統合版も通常版(●ではない)なので、比べ易いです。

右がセット版です。

社会面ではセット版のほうが、縦見出しが現場の動きを伝え、記事のリード部では描写が詳しくなり、記事が追加された印象です。(続く記事は同じです。)

比べて見ての当方の見解です。
記事の締め切り時刻は同じですが、整理部で少し考える時間があるようで、降版時刻はセット版が少し遅い(10分程度か?)ようです。

 

 


昔は、セット版と統合版はハッキリ分かれていて、12版が2種類は、ありませんでした。12版から14版がセット版で10版以前が統合版だったような記憶があります。また、統合版には、統合版と書かれていたこともあります。(なぜか11版は、なかったような・・・。夕刊も、ある時から1版が消えたような・・・。)
同じ版のセット版と統合版があるのは、分散印刷で締め切り時間に余裕が出て、さらに交通事情もよくなったため、昔のように午後8時ごろに締め切る必要もなく、かと言って夕刊の需要もないための現象と思われます。版数を再編成して番号を繰り上げると締め切りを早めたと思われるのもイヤなのでしょう。(裏を返せば、全国的に12版以上ですので、無駄に金がかかりますが、どこにでも夕刊を配られる状態と見ます。工場から販売店まで、全国的に4時間以内でしょう。<渋滞は見込まない。>)

夕刊についても書いておきます。以前は、1版は午前10時頃の締め切りと思いますが、今は、これが無く2版の11時頃の締め切りが初版だと思います。3版は正午頃、最終の4版は、午後1時頃になります。昔に比べ、夕刊のほうは、交通事情により、締め切りが30分ぐらい繰り上がっているような気がします。また、夕刊に降版時間協定があるかは知りません。

地方紙では、徐々に夕刊が廃止の方向ですが、全国紙は、がんばっています。しかし、産経が2002年に東京管内で、毎日が2008年に北海道で廃止したのに続き、朝日は佐賀と大分で2011年3月に廃止しました。本日(1月23日)、この文章を書くために、ネットを色々確認していると、タイムリーなことに朝日新聞は、さらに福岡の一部と山口でも、夕刊を今年3月末で廃止するようです。(社告を見ていませんが、4版地域だけになるのでしょうか。)
夕刊の廃止地域は、各社バラバラですので、新聞によって売れているところ、そうでないところもバラバラなんでしょうか。
今のところ、読売だけが、まったく動きを見せていませんが、”そろそろ何処かで”という感じがしますので、目を離せません。

それと、新聞の版が夕刊の4版から朝刊の12版までの間が抜けているのは、昔はその間にも版建てがあったようですが、これまた明確な資料を見出せません。
自宅にあった30年ぐらい前の古い新聞を確認したところ、特定の1社ではありませんが、朝刊1面で、7、8、10版を確認できました。また、中面ですが11版もありました。また、夕刊も1版を見つけました。残るは、5版と6版です。

全国紙の富山版と多分新潟版は、ここ30年ぐらいの各紙が、適当な間隔であると思いますので、年代により版が、どのように変化しているか調べてみます。まとまれば報告します。


さて、セット版と統合版の配達地域は、交通事情などを考慮して新聞社側で決めていますので、読者側で選ぶことはできません。しかしながら、現在は、上記のような理由で同じ版があるため、両並びになっている場所があるようです。
ただし、セット版限定地域で朝刊しか取らない人がいるのも事実です。記事が飛ぶのは気にならないのでしょうか。

ところで、セット版の朝刊のみの配達契約は、新聞に特別に適用される「再販価格の拘束と特殊指定」の対象にならないのか、新聞販売店が自由に価格を設定できるようです。そのため、約1000円引きの統合版価格並みから、ほとんど値引かない店まで色々のようです。


版建てとは、少し別のことになりますが、カラー印刷が普及し始めた1980年代、各社の印刷工場では、一面をカラー化した所と、まだの所があり、同じ版の紙面でも写真がカラーの所と白黒の所がありました。当時住んでいた川崎市では、朝日新聞はまだ白黒印刷の地区で、都内はカラーなのにガッカリでした。
また、現在でも地域によって、カラー印刷のできるページ数に違いがあり、一面は、ほぼカラーでしょうが社会面や地域面は、白黒になる場合があります。最近も、読売新聞が東京スカイツリーの360゜パノラマ画像を入手したと、朝の情報番組ではカラーの紙面が紹介されていましたが、北陸版では白黒で迫力がなくガッカリした記憶があります。
多分、カラー広告があると、カラー印刷のできるページ数が少ない工場では広告優先となり、本来カラーであるべき記事面が白黒にされてしまうのだと解釈しています。
(このことは、北日本新聞への委託印刷前でしたので、現在はOKと思われます。ちなみに当時の読売北陸工場は最大40ページ、うち12面のカラー印刷が可能な輪転機が1セットの構成でした。一方、北日本新聞は最大48ページ、うち40面のカラー印刷が可能な輪転機が2セットありますので、今後は編集通りの印刷が可能と思われます。というか多分、読売にとってはオーバースぺック?)

それと、ある時期、セクション折りと云うのを実施したことがありました。(朝日の香川版と読売の富山版を確認。また、朝日の東京管内の夕刊も確認)


(「セクション折り」とは、別刷りを印刷しながら、本紙に自動的に挟み込む方式です。ほぼ同ページの新聞を2つ折り込んで毎日配達されます。販売店で差し込む日曜版とは異なります。)

 

1996年6月14日付読売新聞

 

第一紙面には、政治・経済・外交、第二紙面には、文化・スポーツ・地域・社会といった分け方でした。

ちょうど、全国ニュースを一面に、地方ニュースを第二紙面の一面に載るように配置されていました。しかし、いつの間にか、元に戻ってしまいました。苦情や不都合があったのでしょうか。
なお今も、一部の地方紙やスポーツ紙では、スポーツ面やテレビ欄、あるいは競馬面を、別刷りに分けた紙面を作成しているのを見掛けます。

セクション折りについての当方の感想を書きます。(実際にこの時期購読していたことがあります。)
一面が二枚あり、制作側にとってはインパクトがあると思いますが、何か特別な事情の時に発行されるのはともかく、毎日のことだと、新聞の前半と後半が別々の場所にあったりして探すのが面倒です。
また、何がどっちに出ているか、覚えるつもりもなかったですが、分かりづらかったです。前後ともにテレビ欄があれば、便利かなとも思いました。


一応念のために書きますが、12版とか14版が最終版とか、書きましたが、これは各社がそれぞれの判断で番号を振っているのであって、別の新聞の同じ番号と比べて、締め切りが早いとか遅いとか言っても意味がありません。1980年代始めの朝日新聞は13版が最終版でしたし、産経新聞は、かなり昔から15版が最終版です。(協定のある最終版以外の版も、各社の締め切り時刻は異なると思います。)

当方も、川崎市に住み始めた時に勘違いし、川崎版は「読売」が14版、「朝日」が13版で、朝日は早い版を配達していると思っていたところ、読み比べて両方とも最終版だと気付きました。(でも、普通は気付かないと思います。朝日新聞も、マズいと思ったのか、1982年頃に14版を最終版に変更しました。←変更日の新聞を持っていたはずですが、現在未確認です。この時、夕刊も1版を廃止したのかもしれません。また、産経新聞は番号を大きくして、遅い版を装っている印象です。) 

それと、「スポーツ紙」に降版協定はありません。海外で行われているスポーツ大会では、未明や明け方に結果が出ることがありますが、関心が高ければ、いくつもの●や★が付いた、最終版の追いかけ版が大都市の駅売店でのみ販売される場合があります。テレビの朝の情報番組でも、宅配は、こうだけと、駅売りは「これ」と見せている場合があります。
オリンピックやサッカーでは、午前5時の出来事でも追いかけ版を発行すことがあるようで驚きます。


おまけです。

ラッピング紙面といって、本来の一面・最終面(テレビ欄)の外側、すなわち包むように、もう1枚外側に紙面がある新聞が発行されることがあります。催し物の全面広告などに利用されるようです。これをいきなり配達されると、びっくりします。広告効果抜群かもしれません。でも、何の広告だったかあまり覚えていません。

また、ラッピングとは違いますが、特大ニュースでは、題字を本来の右側から左側へ移動させ、最終面と合わせて見開きで大きく報道する場合があります。オリンピックなどでは、スポーツ紙だけでなく一般紙でも見開きにすることがあります。また、東日本大震災でも、複数これを見ました。
↑この形式をどう呼ぶのか知りません(申し訳ありません。)

 

以上、全国紙の版建てを中心に、少し外れた話題も書いてみました。