版建てについて、全国紙での例で説明します。

全国紙はその名の通り全国を配布地域にしてます。しかしながら、各県ごとに印刷工場がある訳ではありません。
そこで、例えば全国的に朝6時までに配達したい場合、印刷所から遠い地域へ届けるには、早い時間に印刷する必要がありますし、他社との競争上、印刷所近くの配達分は、遅く印刷したほうが最新の記事を載せることができます。
このような事情により、各新聞社では、同じ日付の新聞を、記事の締め切り時刻を区切って数種類制作しています。
このことを版建てと云っています。

版ごとの配達地域は、各社の印刷能力などが分かるため、秘密事項となっているようです。 また、全国紙の本社がある地区では、降版協定といって、過当競争を防ぐ意味で最終版を印刷工程へ回す時刻を定めています。
配布エリアが複数県にまたがるブロック紙や面積が大きい県の地方紙でも、同様な版建てを取り入れています。

また、どうしても紙面に載せたい緊急ニュースが飛び込んだ場合には、印刷を中断し、記事を差し替えることもあります。
この場合、新聞社では特別なマークを入れ、変更があったことが分かるようにしています。


紙面に出てくる版建てに伴う記号についてです。

通常は、版が進むにつれて数字が大きくなるだけですが、時として、その版数の横に記号が付いていることがあります。
新聞社によって、意味合いが違うこともありますが、一般的に●が付けば、本来の版の一部記事を差し替えたり、修正したりしたものです。印刷が始まってからの修正ですので、本来の版もそのまま印刷されます。したがって、地域によって微妙に違う新聞が配達されます。

●が、付いた例です。

 

また、大事件などでは、●が複数付く場合もあります。

●が、ふたつ付いた例です。(開票速報)

翌日付の新聞では <一部地域既報> と表示されていることがあり、前日紙面に手を加えてあることが分かります。自分の家に差し替え版が配られていれば、ラッキーです。
スポーツ紙では、この種のマークが3つ以上並ぶ場合があります。

 

また、◎が付く場合があります。
これは、印刷を始める前に出来上がった紙面を破棄し、記事を差し替え・修正したものです。印刷前ですので、新聞は1種類です。この2種類の記号(●と◎)は、割とよく見掛けます。

 

 

◎が、ふたつ付いた例です。
どんな変更があったのか気になります。

これ以外に、丸で囲まれた数字が付いたもの、県名が付いたもの(全面広告では、特定県向けで比較的あります。)、その他の記号など、注意していると色々見つけることができます。


また、朝日新聞では▲は統合版を示し、読売新聞ではSが付くとセット版のことになり、記号の意味合いが反対です。

朝日新聞の統合版表示です。

朝日新聞の場合、▲の代わりにNが付く場合もあるようです。

 

読売新聞のセット版表示(現在の形式)

 

読売新聞のセット版表示(以前の形式)

 

それと、ここ数年の傾向ですが、一面と最終面(テレビ欄)の隙間の下方に新聞を印刷した工場を表す記号が付いている新聞が多くなりました。全国紙では、読売新聞が地名交じりの記号で分かりやすいです。以下の3つは、読売新聞の例です。

 

 

  

 

これは、朝日新聞の例です。

朝日の場合は、記号が分かりにくいです。
(これは、仙台と分かりますが、暗号のようなものもあります。)


ここでお断りです。

締め切り時刻とは、記事の入稿がストップとなる時刻で、降版時刻とは、その記事を割付け、見出し・写真、さらには広告を含めたレイアウトが完成した紙面を印刷部門へ送る時刻ということで、厳密には意味が違います。

しかし、一般的には同様、あるいは混同して使われています。当方では分けて表示したいとは思いますが、「締め切り」と云いながら、多くの場合は「降版」のことを言っていると思います。ご了解ください。
活版時代には、この時間差は大きかったと思いますが、コンピューターで編集・制作している現在では、ほとんど差がない、という思いもあります。←逆に、瞬時にデータを送れるので、記者の手元に書きかけの記事が留まる時間が長くなったかもしれません。